「ぼくらのバス」(大島真寿美)

秘密基地は男の夢です

「ぼくらのバス」(大島真寿美)
 ピュアフル文庫

小学5年生の圭太は
弟の広太を誘って
「バスの図書館」へ行く。
管理人のおじいさんが
亡くなって以来、
使われずにいたバスの図書館。
二人はこっそり忍び込み、
秘密基地へと仕上げていく。
ある日、そこに
家出中学生の順平が加わり…。

秘密基地は男の夢です。
誰にも知られない、
もちろん家族にも知られない
自分の居場所。
男はいくつになっても
秘密基地にあこがれます。
まあ、50過ぎて家族に秘密の
居場所などつくろうものなら
女房にどんな目に遭わされるか
知れたものではありませんが。

本書は少年三人の、
ひと夏の秘密基地を描いた作品です。
それだけでもワクワクするのに、
秘密基地はなんと図書館バス。

つい物語に引き込まれて、
自分が子どもになって
圭太と同じ事をしている場面を
想像しながら読んでしまいました。

まず秘密基地づくりに大切なのは
掃除です。
秘密基地は綺麗かつ清潔でなければ
いけないのです。
汚れて散らかっている部屋を
あてがわれて、
「ここがお前の秘密基地だ」と
言われれば、
私は喜んでせっせせっせと掃除します。
ピカピカになるまで
雑巾がけだってします。
圭太、広太の兄弟も一生懸命でした。

次に重要なのは整理整頓。
秘密基地は必要な情報に
すぐアクセスできる
機能美も必要なのです。
順平が考え出した本の目録づくり。
グッドです。
私も部屋中にあふれかえる
本とCDをいつも順番を考えて
完璧に収納しています。
目録づくりまでは
手が回っていませんが。

そして最後に大切なのは、
最低経費で必要十分な
アイテムを揃えること。
圭太、広太の兄弟は、
ガラクタを集めて
布団やタオルケット、まくら等の寝具、
そしてコップやどんぶりなどの食器類、
さらには理科室から
アルコールランプまで失敬して
調理器具まで調達してしまいます。

そうです。
彼等の秘密基地は秘密基地たる諸条件を
完璧にクリアしているのです。
胸のすく思いがします。

中学校1年生に薦めたい一冊です。
秘密基地で一回り大きく成長する
三人の少年の姿に、
ぜひ触れて欲しいと思います。

※10年前、息子の部屋を増築する際、
 自分の秘密基地願望を
 反映させました。
 壁一面の収納棚、
 部屋の中の中二階的なロフト、
 ロフト奥に秘密の隠し戸…。
 おかげで高校生になっても、
 さっぱり勉強しませんでした。
 ああ…。

(2020.6.5)

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